2013-06-04 02:55

髭の男と隊列を成して彼方に行った人々の群れ

 

これは夢ではなかった。

私はある寺院に居り、既に前日から曼荼羅に祈りを捧げていた。

 

私だけの力では鏡は開きそうもなかった。

それでも、自分の力で鏡を開くしかないのだと教えられていた。

 

尊敬する師の像が前にあった。

像は私に背中を向けて、曼荼羅を見ていた。

像の手許にある数珠をお借りして、祈りを捧げた。

 

そして長い時間が過ぎた。

もう、夜が明けるのではないかと思ったが、空は明るくはならなかった。

その時、鏡が突然、開いた。

ぬっと現れたのは大きな髭面の男であった。

ニコリともせずに私を睨み、そして鏡の中に歩いて行ってしまった。彼は一族の長であり、私の祖先であろう。

頭にターバンを巻いていた。

見ると、彼の歩いて来たのは砂漠の中の道であった。

ターバンは必ずしも回教徒というわけではない。

砂を防ぐために、そして乾かないように頭部を保護するために巻いているのである。

 

彼の後を老若男女の群れが続いて鏡の中に入って行った。全員がニコニコと笑って嬉しそうに歩いて行く。

 

この人の群れは長く長く続いた。

私はもう祈ることを止め、ニコニコ笑いながら隊列を見守った。

 

そして、いつか隊列は途切れた。

最期の一団が鏡の中に去ると、鏡は閉じてしまった。

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